- 修士で論文投稿するにはどうすればいい?
- 修士が論文投稿するのは難しい?
この記事でわかること
- 修士が査読付き論文を投稿する方法
- 修士が論文投稿するメリット
- 論文投稿までの流れ
私の体験談をもとに修士が査読付き論文を投稿する方法を解説しています。
注)奨学金免除や自己満足のために論文投稿を目指す人向けです。大学教授や公的研究機関の研究員のようなゴリゴリの研究者を目指す人向けの内容ではありません。
自己紹介
- 理工系の修士卒
- 筆頭著者として国際ジャーナルに査読付き論文を投稿
- 上場メーカーの開発職から専業主夫に転職
査読付き論文とは
査読付き論文とは、
査読を通過して学会誌に掲載された論文です。
卒論や修論とは異なり、一定の信頼性が担保されています。
査読では学会誌に掲載する価値がある論文なのかを他の研究者に評価してもらいます。
査読制度を設けることで、学会誌に掲載される論文の質が高くなるのです。
査読で「掲載する価値がない」と判断されれば、その学会誌に論文を投稿できません。
査読をクリアして論文が掲載されることを「アクセプト」、掲載を拒否されることを「リジェクト」というよ
リジェクトされる理由はさまざまですが、最悪の場合は研究の方針を根本から変える必要があります。
修士が査読付き論文を投稿するメリット
修士が査読付き論文を投稿するメリットは4つあります。
実績として認められる
査読付き論文はあらゆる場面で実績として認められます。
就職や転職で履歴書に書けますし、副業やフリーランスとしてライティング業務を受託する際にも提示できます。
論文はWebで公開されることが多く、著者の名前を検索すればヒットするので実績を容易に証明できるのです。
論理的な文章の書き方を修得できる
査読では論理の飛躍がないか、明瞭な文章かを細かくチェックされます。
研究室内ではニュアンスが通じても、対外的には伝わらない言葉や表現は意外とあります。
普段の実験風景を全く知らない人が読んでも、正確に理解できる説明をしなければなりません。
「書く→読み直す→修正する」というサイクルを何回も繰り返すうちに、自然と文章力が鍛えられていきます。
奨学金が免除される
奨学金が免除される確率が大幅にアップします。
実際、私は論文を投稿したおかげで奨学金106万円が免除されました。
実績を獲得し、文章力も鍛えられるうえに、100万円までもらえると考えればお得ですよね。
英語のライティング力が伸びる
国際ジャーナルへの投稿を目指すならば英語で書く必要があります。
英語の文章を読むことはあっても、英語を書くことは少ないのではないでしょうか。
いざ英語を書いてみると英語知識をフル活用して試行錯誤するので、ものすごく良いトレーニングになります。
リーディングとは違う思考回路が脳内に新設されていくイメージ
自己満足
学内で完結する卒論や修論とは違い、公に研究成果として認められるので達成感があります。
研究者の端くれになれた感を味わえた
査読付き論文を投稿できれば、自己肯定感も少しばかり上がるかもしれません。
研究成果よりも重要な3つのこと
論文投稿には研究成果が不可欠ですが、成果を追う前に気を付けておきたいことがあります。
成果を出しやすい研究テーマ
身も蓋もない話ですが、
成果を出しやすいテーマの方が論文を投稿できる確率は上がります。
私は研究者を目指していたわけではなく、研究という貴重な体験をするために大学院に進学しました。
言い換えると研究テーマにこだわりがなかったので、3年間(B4、M1、M2)で成果をあげられそうなテーマにしました。
研究室で昔から行われている研究だと過去の研究資産を活用できます。
過去の成功例と失敗例をもとに、より精度の高い仮説を立てられるよ
昔から研究されている分野だと実験器具が既に揃っていたり、マニュアルがあったりして実験スキルも効率的に修得できます。
これからテーマを決める人は成果を上げやすいテーマの特徴を意識して決めましょう。
既にテーマが決まっている人も過去の研究資産や先輩を頼ってみてくださいね。
「そんな不純な動機で研究テーマを決めていいの?」と思った人は注釈*1をご覧ください。
審査が簡単な学会誌
学会誌によって査読の難易度は変わります。
論文投稿を目指す修士は査読の難易度が低い(リジェクト率の低い)学会誌を選びましょう。
学会誌の権威性はあまり気にしない方がいいです。
極端な例ですが、修士でNatureやScienceなどの有名誌に投稿するのは超絶天才でもない限り不可能です。
また、学会誌の権威性を示す指標にインパクトファクター(Impact Factor, IF)があります。
IFが高い学会誌ほど、査読の難易度も高いの?
よくある誤解ですが、IFと査読の難易度は関係ありません。
科学ジャーナルの出版社Frontiersは、570誌のジャーナルについてIFとリジェクト率の関係を調べたところ両者にはほとんど相関がないと報告しています。
私はIFにとらわれず、教授と相談して投稿する学会誌を決めることをおすすめします。
教授に好かれる
ひとつだけ断言できることがあります。
修士の分際で、教授の助力なくして論文を投稿するのは無理
ということです。
卒論や修論では教授に添削してもらいますよね。
査読付き論文を投稿するには卒論や修論の何倍も注意深く添削してもらう必要があります。
ましてや、国際ジャーナルに投稿する場合は英文も見直さなければなりません。
論文投稿の経験がない修士が自力で査読をクリアしてアクセプトされるのは極めて困難です。
多くの人は教授に頼りまくることになるので頼れる関係を築いておきましょう。
査読付き論文を投稿するまで
修士が査読付き論文を投稿するまでの具体的な道のりを紹介します。
研究成果を出す
言うまでもなく、研究成果は不可欠です。
ここでは多くを語りませんが、成果を出すには仮説と検証をひたすら繰り返すしかありません。
世間をあっと言わせるような大発見でなくても、従来の研究と少し視点を変えた新規性があれば大丈夫です。
ノーベル賞級の大発見ばかりが取り沙汰されるけど、多くの研究は意外と地味だよ
テキトーな例ですが「鉄に混ぜる炭素量を従来の0.5%から0.8%にしたら強度が10%向上した」とか「混ぜる際の温度を従来の500度ではなく550度にしたら工程時間が15分短縮された」とかです。
少し視点を変えるだけで成果らしきものが見つかるかもしれないので諦めないでください。
投稿雑誌を決める
ある程度の成果が出たら投稿する学会誌を決めます。
最初に提出した学会誌でリジェクトされても、他の雑誌に投稿できるので仮決めでOKです。
私は奨学金免除を狙っており卒業までに投稿したかったので、掲載日と査読期間を基準に決めました。
学会誌の詳細はネットで公開されていますし、教授も知っているはずなので聞いてみましょう。
原稿を書く
学会誌を仮決めしたら早速原稿を書いていきます。
ここが最も時間を要するステップなので、早めに取りかかった方がいいです。
査読期間を短縮するためにも、あらかじめ教授に厳しくチェックしてもらいましょう。
ぼくは7回書き直してから査読に出したよ
また、英語で書く場合は英文校正サービスを活用しましょう。
単語のニュアンスの違いや接続詞の使い分けなどを指摘してくれるので自然な英文が書けます。
査読を依頼する
原稿を書き終えたら査読を依頼します。
査読期間は学会誌によって異なり数週間から数ヶ月と幅があります。
結果が気になるところですが、気長に待ちましょう。
査読が一発で終わることは少なく査読者からの指摘と質問が返ってきます。
質問が来た場合は回答書を作成して、修正した原稿と共に送り返します。
査読者の納得がいくまで質問と指摘、およびその回答が終われば査読は終了です。
ちなみに国際ジャーナルの場合は質問のやりとりも英語です。
アクセプト or リジェクト
査読が終わったら、いよいよ結果がわかります。
ぼくは査読者とのやりとりを二往復したのち、10日間ほど空いてアクセプト通知を受けたよ
リジェクトされた場合は論文執筆あるいは研究自体をやり直して再提出するか、そのまま他の学会誌に提出するかの二択です。
リジェクトされたら教授と話し合って今後の流れを決めましょう。
まとめ
この記事では、私の体験談をもとに修士が査読付き論文を投稿する方法を解説しました。
修士で査読付き論文を投稿するのは難しいと思いがちですが、研究室の過去の事例を活用したり、教授や先輩の助けを借りたりすれば達成できます。
修士の場合は努力や能力よりも運要素が強いかもしれません。
この記事では運を味方につける方法として、研究テーマ選びや教授との良好な人間関係など現実的な手段を紹介したつもりです。
修士で論文を投稿することは非常に価値があり、なおかつ面白い経験になります。
今回紹介したことを参考にして頑張ってみてください。
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*1 成果の出しやすさで研究テーマを選ぶことに引っ掛かりを覚えた人へ
確かに純粋な興味関心をモチベにした方が良い場合もありますが、テーマを決める大学3,4年生の段階で研究背景を十分に理解している人は少ないと思います。
興味あるテーマでもやってみたら思っていたのと違った、あるいは興味はなかったけど意外と面白かったということは珍しくありません。
私も研究を始めてみないと知り得ないことがたくさんあると実感しました。
修士課程までしか進学しない人は、3年間で成果の出るテーマの方が研究していて楽しいと思います。
最低限の興味関心は必要ですが、成果の出しやすさという観点で決めるのもアリだと考えています。
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